仕事のやりがいを高める方法
勉強会参加者の質問
勉強会の問いシリーズ、8回目はテーマ報酬についてです。
医療系の企業で人事をしている大楠さんはこんな問いを持ちました。
『日本では仕事のやりがいが低下し続けている』とのことでしたが、「仕事のやりがい」を高める方法にはどういった種類のものがあるのでしょうか?
使うツールや場の設計、運用の方法など、原理原則を踏まえた上で、価値観が多様化した中で人事として色々なパターン(武器)を学びたいです。
特に目標設定がポイントだと考えています。
『これからの仕事のやりがいは「本質」「没頭」「卓越」』を原則と置いた上で、仕事のやりがいを高めるいくつかの方法について議論しました。
やりがいを高める目標設定
まずは個と組織の重要な接点である目標設定について大楠さんが以下の事例をあげてくれました。
- リクルート社のWill-Can-Mustシート(やりたいこと、できること、すべきことをすりあわせる目標設定シート)は理に叶っている。しかし高いレベルで運用する必要がありマネジャーによって効果に差が大きい。
- 投資マンションの営業会社にヒアリングしたところ、外的報酬(賃金)を最優先した目標を立てていた。営業との面談時は今欲しいものを言語化してもらい、それを得るための売上目標を上司と共に決定する。
- リゾート会社にヒアリングしたところ、内的報酬を最優先した目標を立てていた。施設支配人の業務の半分はスタッフとの目標面談。「ゲストを幸せにするには?」を問い続け、スタッフの成功事例を支配人が全国に即発信する。異動も希望を優先するなど、飽きのこない環境を作り続けている。
組織の目標はある程度決まっている事が多いのですが、個人のやりがいは仕事以外の側面(育った価値観や生活環境)が決定要因としてあり変動性が高い。『魅力的で「やんちゃ」な目標が人を動かす』でも考えてきたモチベーションマネジメントを改めて見直す機会になりました。
大楠さんは目標設定についてこう結論づけました。
自社として目標設定で何を実現したいのか、社員との合意を得た上で実施する事が必要です。
報酬の納得感を得るためには、報酬の中身自体もそうですが、事前の目標設定面談が活きてないと効果がないとの結論に至りました。
現場の良い動きにフォーカス
上のリゾート会社の例でもあがったとおり、会社や人事から思想を伝えるのではなく、現場で起きている良い動きをそのまま取り出して伝える方法も有効なようです。以下の事例があがりました。
- 良い仕事のナレッジを自らプレゼンする大会、リクルートマネジメントソリューションズのナレッジグランプリ
- 現場でいい動きをしている人を取り上げて皆に伝えるサイボウズの感動課
- ベテラン運転士が自分の仕事の誇りを語る場を設けた鉄道会社
語り手の内省が進むだけではなく、代理経験によって聞き手の成長にも繋がります。またそれを奨励することで会社の価値観も浸透していきます。
副業の推奨
近年では、副業を推奨する企業も増えてきています。これは自社以外にやりがい(内的報酬の提供)を委ねている形とも考えられそうです。
やりがいは会社に与えられるものか?
しかし、そもそも仕事のやりがいとは会社が準備して提供するものなのでしょうか?
森博嗣は『「やりがいのある仕事」という幻想』という著書の中で、やりがいなんてものに囚われて追い求めるから苦しくなると言っています。
そして優秀なプロフェッショナルは「自分を高められる環境」に定着するものです。自由意志を持ち、自ら前に進もうとするプロフェッショナルを信じて邪魔しない人材マネジメントが、「仕事のやりがい」を高めるためには何より重要だと私は考えています。

次回は、テーマ5.リソースフローへの質問です。Q9.「自分より優秀な人間を採用する」組織文化を作るには?です。
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