森博嗣『「やりがいのある仕事」という幻想』を読む

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身も蓋もない仕事論

IMG_5301.JPG悩めるのは豊かな証拠

前回、『自由をつくる自在に生きる』を読むでも登場いただいた森博嗣は元大学准教授である。そのため学生や卒業生から仕事についての悩みをよく相談をされたのだそうだ。

この『「やりがいのある仕事」という幻想』は、そんな悩める若者たちの役に立つならば、と思って書いた本だそうだ。だがまあ。

昔は悩む暇などなかっただけのことで、今は、悩めるだけでも豊かになった証拠では、と認識しているけれど、それを書いたら身も蓋もないか(書いたが)。

そう、森博嗣は身も蓋もない人である。この仕事論も鋭くアンチでとても面白かった。

日本では仕事のやりがいが低下し続けているモチベーション、仕事のやりがいについて考えすぎて行き詰まったときに読むと、頭に違う風が吹くのではないだろうか。

 

思い込んでいるから悩む

「仕事は楽しいものだ」「仕事を好きにならなくていけない」という幻想を持っていると、ちょっとした些細なことが気になって、「なんとかしなければ気持ちが悪い」と悩んでしまう。僕が、相談を受けるものの多くは、これだった。
つまり、苦労と賃金を比較するというよりは、理想と現実を比較しているのである。さらに分析すると、その理想というのは、勝手に妄想していたものだし、また、現実というのも、よく観察された結果ではなく、勝手に思い込んでいるものにすぎない。

この本の一貫した主張は「人は働くために生きているのではない」、だから「仕事に(無理に)やりがいを見つける必要はない」ということである。そんなことで悩まず、もっと自由に生きてはどうかと(その先に、本質的なやりがいがあると)。

 

人は、自分で決めることができる

森博嗣はミステリ小説『笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE』でも同じ話題を取り上げてる。

「一番下品な格言って知ってる?」
「働かざるもの食うべからず、ですね?」
「そうだ。いやらしい、卑屈な言葉だよね・・・・・。僕の一番嫌いな言葉だ。もともとは、もっと高尚な意味だったんだよ」
「え?どんな?」
「一日なさざれば、一日食らわず」
「それ、同じじゃありませんか?」

働くことが偉いと無条件に考え、その思考に束縛されることは卑屈で不自由だ。しかしなすべきことに向けて自分を律して進むことは高尚で自由だ。

この『笑わない数学者』という小説のラストシーンは、とても美しい。最後の7文字を読んだときは背筋が寒くなった。

意志」の美しさ。森博嗣の文章の魅力はそこにあると思う。

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