人材開発は一人ひとりの「人」に働きかけ、組織開発は人と人の間にある「人間」に働きかける

組織開発

IMG_5212テーマ6では人材開発を扱ってきたが、テーマ7は組織開発である。組織開発とは何だろうか。日本ではまだ耳馴れない領域だと思う。

人材開発は一人ひとりへのアプローチだが、組織開発は人と人の間にある関係性へのアプローチである。

とは言うものの個と組織は不可分である。人材開発と組織開発の領域は大きく重なり、とくに日本では意識しないままに組織開発的な取り組みが行われてきている。だからどこの話か分からない(分けて考えられない)方も多いのではないだろうか。

私も人材開発と何が違うのか、はじめは全く分からなかった。組織開発という単語が出るたびに混乱していた。

しかしその領域を体系化し意識的に取り出して学ぶことには意味があると考え、あえてテーマとして切り出している。

 

組織開発とは何か?

組織開発(organization development 略称OD)は1950年代後半にアメリカで発祥した。その定義はいろいろあるが、共通しているのは以下のとおりだ。

組織の効果性を高めることを目的に、行動科学を応用した、組織内のプロセスを変革する、計画的な取り組み』

まだぼんやりしていて、よく分からない。こういう時は比較して、何と違うかを考えるべきだ。

 

チェンジ・マネジメントとの比較

アメリカの研究者マーシャクが、チェンジ・マネジメントと組織開発を比較しているので見てみよう。チェンジ・マネジメント(以下CM)は1990年代から起きた組織変革のアプローチで、大手のコンサルタント(マッキンゼーやボストン・コンサルティングなど)が行ってきている。

両者の違いは以下のとおり(CM⇔組織開発の順)。その差から組織開発を浮き彫りにしたい。

成果⇔プロセス

CMは成果を強調するが、組織開発ではどのように進めていくか、そして人と人との間に起こっていることと、いう意味でのプロセスを強調する。

エリート・プロセス⇔パーティシペイトリー・プロセス

CMは基本的に少数派の人たちがつくって,それを進めていくエリート・プロセス。
組織開発はできるだけ多くの人に参加を促し決定する時にも多くの人が関与できるようにして進めていくパーティシペイトリー・プロセス。

経済的な価値⇔ヒューマニティックな価値

CMは経済価値を重視するが、組織開発は人間尊重的である。

ディレクティングによる方向付け⇔当事者主体

CMは方向を示唆しディレクションするが、組織開発ではファシリテーションやコーチングによって当事者がどのようにしていくか、どのように変革に取り組むべきか、そのプロセスを支援するプロセスコンサルテーション(キャリア開発で登場したエドガー・シャインが提唱している)が中心となる。

 

組織開発の手法

アメリカの大学院で教科書として使われている「Organization Development and Change(Cummings & Wor- ley,2009)」によると、組織開発の手法は4種類に分けられるという。

1.ヒューマンプロセスへの働きかけ

組織開発の基本的な一番昔から行われている手法。コミュニケーション、人間関係、風土の問題を様々な手法で解決する。プロセス・コンサルテーション、チーム・ビルディング、フューチャーサーチ、AIなど。

2.人材マネジメントによる働きかけ

HRMのこと。目標設定、評価など。

3.技術・構造的働きかけ

仕事の仕方、組織のデザインに対して働きかけていく方法。

4.戦略的働きかけ

戦略的な変革、合併、提携など、ビジョンと戦略を明確にして働きかける方法。

この4つを中村和彦が整理したものが下図である。横軸にシステムレベル(個人、グループ、組織全体)を、縦軸に時間(現在のソフト、現在のハード、未来)を置いている。

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組織開発で用いられる手法のタイプ分け(経営行動科学第27巻第1号より)

非常に大きな領域となるが、中心には「ヒューマンプロセスへの働きかけ」があり、ここを外してはならないことが分かる。そして、日本企業の部署構成では、グレーで色づけされた箇所がすっぽりと抜けていることも分かる。

 

新たな人事の役割の可能性

多くの日本企業には、各部門や組織全体の風土(上図の中央およびその右範囲のグレー箇所)に働きかける専門部署はないアメリカには組織開発部門が昔から伝統的にあり、あるチームがうまく行っていないときは組織開発部門に電話がかかってくる。内部の組織開発コンサルタントに依頼がなされ、チーム・ビルディングなどの支援をしてくれるのだ。

部署ごとの戦略レベル(上図の上段中央)も空いている。「会社全体の戦略の下、私たちの部署は何をするか」を支援する機能も多くの日本企業にはない(経営企画部門が戦略の落とし込みまではやっているかもしれないが)。

この先の可能性として、人事部門がそこを担うことも考えてみたい。たとえば、ある部署のオフサイト・ミーティングを開催する、部門ごとでの将来のビジョンを考える支援をする、といったことを人事が行うのだ。そのためには、組織開発の様々なアプローチを学んでマスターする必要がある。

私が所属するアカツキの人事企画室WIZでは、人組織の直接支援を謳い、その領域に踏み出している。

先日はある部署のビションを作るオフサイト・ミーティングを開催した。その後も、そのビションを元に2020年までの4ヶ年計画と2017年の単年度目標をリーダーたちと共に策定し、その進捗を確認する定期ミーティングに参加するという継続的な支援を行っている。また手探りではあるが、間接的な支援で終わらない人事を目指して走りたいと思っている。

次回は、組織の活性化について考えたい。

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テーマ7.組織開発

参考文献
経営行動科学第27巻第1号『戦略パートナー/チェンジ・エージェントとしての 人事部が取り組む組織開発』

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