自己理解ができなければ他者理解は望めず、自己受容ができなければ他者受容も望めないだろう

個性

IMG_5210テーマ6.人材開発は今回で最終回である。前回は管理職に向いた性格タイプを確認した。今回は大沢武志『心理学的経営―個をあるがままに生かす』から自分の個性について学んでみよう。

 

 

1.MBTIで自分の個性を知る

ユングの性格類型論(タイプ論)に基づいたパーソナリティ・テスト「MBTI」は自分の個性に出会う手がかりとなる。

MBTIは人間の個性を測るモノサシではなく、個性を探る人間理解の手がかりとして、お互いの個性を認め合うための共通の枠組みである。

MBTIでは基本的態度、知覚の方法、判断の方法、ライフスタイルの4つの軸にそれぞれ2つの機能があり、その組み合わせによって16の性格タイプに分類される(下表参照)。例えば私は①内向(I)②直観(N)③思考(T)④判断(J)のINTJタイプである。

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タイプに分類するのは個性理解に迫る出発点であって、終着駅ではない(動物占いのようにここで満足してはいけない)。

自分の性格タイプを知ることによって、自己概念の点検が始まり、それによって他者理解に新たな境地が開かれていくのだ。

 

心理的機能とシャドウ

②知覚と③判断の四つの機能の中で、最も発達した機能を「支配的機能」と呼び、2番目に発達した機能を「補助的機能」と呼ぶ(例えば私の支配的機能は直観(N)であり、補助的機能は思考(T)である。直観的に理想を捉えて論理的に判断する特徴がある)。支配的機能の裏側にある最も未発達な機能を劣等機能と呼び、未熟な行動や不適応行動となって表れやすい(私の劣等機能は感覚(S)であり、現実やルールを認識しにくい(困っている))。

自分と裏側(逆)のタイプをシャドウと呼び、個性化を考える手がかりとして重要な意味合いを持つ。すべての機能が裏返しであるシャドウたる同僚の仕事のやり方は、あなたから見れば理解しがたく受け入れ難いものだろう。しかし彼から見たあなたも同様なのだ。自分と異なるタイプを受容するヒントがタイプ論には隠されている。

 

2.会社人間の虚像と実像

日本企業では本音では専制的なリーダーシップをよしとする考えがあり、TJタイプの規律と効率を志向した合理主義が企業組織にもっとも適応的である(下図参照)。これは前回確認した昇進しやすい管理職の性格とも合致する。

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管理職タイプ分布(心理学的経営より)

しかし、TJ的行動を演じる中ではFP的な感性や情趣を犠牲にしていることがある。TJ的な仮面を被ることで人間的に大事な何かを抑圧していると、いつもの自分ではないもう1人の自分の存在に気付いたときに訪れる破綻の度合いも大きくなる

カラフルな個性で、それぞれがあるがままに生きる「個性化」はどう追求すれば良いのだろうか。

 

3.創業経営者のタイプと相補関係

管理者には組織管理適応型の性格タイプを示す人が多いが、実はトップ経営者になるとその個性のタイプの特徴にばらつきが大きくなるという傾向がある。

大手企業のサラリーマン経営者にはバランス感覚に優れた効率志向の思考・判断(TJ)タイプが多いが、起業家型の創業経営者の場合は、性格を超えた何か強烈なエネルギーが根底にあり、バランスよりは何かを成し遂げようとする達成動機が先行しているケースが多い。このとき周囲がそれを受容し相補関係を作ることができるかどうかが問われる。

 

4.タイプ論の活用

企業人でいる限り「個性化」は自分の所属組織と切り離すことはできない。職場の中で各メンバーがそれぞれの「個性化」の問題を共有することが新たな人間関係への発展の契機となるだろう。

リーダーが自分のタイプに精通した上で、メンバー同士のタイプ情報を共有することができれば、互いの強みを生かし、弱点を補うチームビルディングに役立てることができる。

リーダーは自らの行動特徴をタイプ論を通して曇りなく知ることが重要であり、劣等機能に気づき自分と異なる機能を得意とする部下を評価し、受け入れる相補完性に眼を開くことが企業における個性化を一歩推し進めることになるだろう。

次回から、最後のテーマ「組織開発」に取り組んでいくことにしたい。

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テーマ6.人材開発

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