自己啓発は「忙しいので、ほとんどやっていない」のが多くの個人。企業は1人平均5千円を支援している

自己啓発

IMG_5181これまで見てきたように、自律したプロフェッショナルが求められる現代では、自らの意志で学ぶことが重要だ。

さて今日は自己啓発について考えたい。まず実態はどうなっているだろうか? 厚生労働省の平成28年度「能力開発基本調査」から読み取ってみよう。

 

1.働く個人の状況

調査の取り方の問題もあると思うが、働く個人は自己啓発を「忙しいので、ほとんどやっていない」という結果であった。

自己啓発を行った労働者

  • 正社員45.8%
  • 正社員以外21.6%

自己啓発の実施方法

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自己啓発の実施方法(複数回答)

自己啓発の延べ時間

  • 正社員は「10時間以上20時間未満/年」が20.6%(前回20.7%)と最も多い
  • 正社員以外は「5時間未満/年」が26.5% (前回22.7%))と最も多い
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自己啓発の延べ時間(総数)

自己啓発を行う上での問題点

自己啓発を行う上で「問題がある」と感じている

  • 正社員78.4%
  • 正社員以外70.3%

問題点として最も多い回答は、正社員、正社員以外とも「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(正社員:59.3%、正社員以外:39.4%)。

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自己啓発を行う上での問題点の内訳(複数回答)

 

2.企業の自己啓発支援の状況

企業の支援施策の多くは受講費の金銭的支援であるが、過去3年で支援実績がない企業が過半数以上、一人あたりの平均支出額は5千円/年であった。

支援を実施している企業

  • 正社員へは80.9%(前回79.6%)
  • 正社員以外へは58.8%(前回55.6%)

支援の内容

受講料などの金銭的援助」が正社員、正社員以外ともに最も高い(正社員:79.2%、正社員以外:60.8%)。

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自己啓発に対する支援の内訳(複数回答)

過去3年間の支援費用の支出実績

  • 正社員へは53.9%の企業が「実績なし」
  • 正社員以外へは65.5%の企業が「実績なし」

支援費用の労働者一人当たりの平均額

  • 5千円/年(費用を支出した企業の平均額)

 

3.能力開発の主体は誰か?

欧米企業では能力開発の主体者はラインや個人だが、日本企業では企業であり人事部門主体と言われている(これまで終身雇用年功序列を前提として、会社全体のローテーション画一的な階層別教育で人材開発を行ってきたためだ)。この調査からも、その傾向は如実に読み取れた。

能力開発の責任主体

  • 正社員は「企業主体で決定」またはそれに近いが76.1%(前回76.6%)、「労働者個人主体で決定」またそれに近いが23.0%(前回22.9%)
  • 正社員以外は「企業主体で決定」またはそれに近いが65.6%(前回64.7%)、「労働者個人主体で決定」またはそれに近いが32.4%(前 回33.7%)

組織は企業主体で育てると言っているが、個は忙しくて学べないと言う。そこには「教える」と「学ぶ」という構造に対する根本的な捻れが見える。

 

4.誰が何のために学ぶのか

人事をしていていつも苦悩するのは、意欲のない人には何をしても無駄だ、ということだ。

以前、中小企業診断士を取得するため、資格の専門学校に通ったことがあった。私のいたクラスは50名程度だったが、ほとんどの方は会社から学費補助を受けて受講しているとのことだった(私は自腹だった)。

驚いたことに、受講者の多くは真面目に取り組んでいなかった。平日の夜と土日の授業で疲れていたこともあったかも知れないが、机に突っ伏して寝ている方ばかり。(会社の誰かが頑張って稼いだお金を、いったい何だと思っているのだろうか?)

最終的に、そのクラスで中小企業診断士試験に合格したのは私だけだった。当たり前である。彼らは学ぼうとしなかったのだから。

まさに「馬を水飲みに連れて行くことはできるが、水を飲むかどうかは馬次第」なのである。

一方で、どのような自己啓発に対して支援するかは、重要な経営判断である。何の能力の向上を期待しているかというメッセージを伝えるものとなるからだ。

教えることはできなくても、指し示すことはできる。未来を魅せ、希望を語りたい。

次回は、キャリア開発について考えていこう。

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テーマ6.人材開発

 

参考文献

  • 釘崎広光『トータル人事システム』