OJT
今回は人材開発の方式のうち最も重要なひとつ、OJT(On the Job Training)について考えたい。まずはそのメリットとデメリットを見てみよう。
OJTのメリットとデメリット
メリット
- 日々の仕事の中での教育訓練が行えるので特別な費用がかからない
- 現場での生きた知識や技能を経験させながら教えることができる
- 一人ひとりの能力や必要性に応じて教え方や内容を変えることができる
- 教えられる人はもちろん教える上司や先輩の成長の機会にもつながる
デメリット
- 上司や先輩の持つ能力、技能あるいは教え方によってばらつきが生じる
- 上司や先輩が時間的余裕がない場合行われない可能性がある
- 実践的な知識や技能に偏り仕事の全体に関わる知識を得られない可能性がある
- 上司と部下の関係が良好かどうかによって適切になされるかどうかが影響受ける
効果的なOJTのためには、主体である上司や先輩が必要な知識を持っており、正しい接し方をしなければならないことがわかる。
やってみせ、いってきかせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ
山本五十六の有名な言葉があるが、これがOJTの真髄だと思う。
OJTの手法
次にOJTの手法を確認しよう。
- 伝統的なOJT:
先輩から仕事を通じてトレーニングを受ける。 - コーチング:
経験ある直属の上司などによって1対1で行う。支援することを主眼に置いた個人のもつ潜在能力を最大限に引き出すためのコミュニケーション手法である。部下の有する能力を上司が引き出し、上司と部下が協働するところにその本質がある。 - メンタリング:
長い経験・高いスキル・知識を有する社員がメンターとして指名され、教育の主体者となる。企業文化やマネジメント・スタイルなど仕事に直結しない内容を相談したり、将来のキャリア開発の方向について相談するなど。メンター個人のメンタリングに対する理解や実施のための知識・スキルが必要となる。 - シャドイング:
所属部門以外の別の部門で短期間働いてみる、あるいは経験豊富な人と一緒に仕事をしてみて、彼らのやり方を観察したり、自身の実践を通じて学習する。 - ジョブ・ローテーション:
多くの職種を経験すること。日本では一般的だが、職種別・職務別採用の多い欧米では普及していない。将来幹部になることが期待されている人材にとっては重要な仕組み。
OJTの根幹には「権限を与え、自立させつつ任せること」によって人は育つ(山本五十六の言う「させてみて」パートによって人は育つ)という考え方があるが、コーチングはその有効な手法だと考えられる。
フィードバックの意義
フィードバックを求めるのは人間の基本的な欲求の1つだ。多くの人は、自分の仕事ぶりや仕事の結果について上司や周囲がどのように評価しているかを知りたがっている。
そしてフィードバックが与えられることによって動機付けられる。フィードバックはつねに肯定的に作用するわけではないので、上司や先輩は部下が前向きに受け止めることのできるフィードバックを行っていく必要がある。
まさに「褒めてやらねば、人は動かじ」なのだ。
次回は、Off-JTについて考えたい。

参考文献
- 釘崎広光『トータル人事システム』
- 須田敏子『HRMマスターコース―人事スペシャリスト養成講座
』
- 奥林康司・平野光俊・上林憲雄『入門 人的資源管理
』
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