人材開発
人材開発とは、社員が必要な能力(知識・スキル・スタンス・組織文化)を身につけるために行うものだ。
人材開発へのアプローチ
まずは基礎知識としてLuomaの人材開発に対するアプローチをご紹介したい。
1.Need-Drivn Approach:
経営戦略実現に必要なスキルと、現在のスキルのギャップを、トレーニング・ニーズとして重視するアプローチ。
2.Opportunity-Drivn Approach:
自社の経営戦略よりも、世の中に普及している内容に焦点を当てる。新たなマネジメント・メソッド導入によって、これまで以上の成果を期待する。システマチックではないが、実際には多いアプローチ。
3.Capability-Drivn Approach:
内部資源重視の経営戦略論に基づいたアプローチ。1が経営戦略ありきでHRD戦略が決定されるのと異なり、人的資源が戦略構築の核となる3では、HRD戦略が経営戦略の中心となる。
人事になる前、私は理想の姿に向けて現状とのギャップを埋めること(1.Need-Drivn Approach)が人材開発だと思っていた。多くの人も同じではないだろうか?
しかし人事になってみると、実際にはほとんどの人事施策は流行しているから、他社もやっているから、という理由で行われていることを知った(2.Opportunity-Drivn Approach)。
そして、経営戦略を生み出すのは人であり、人材開発こそ経営戦略の中心という3.Capability-Drivn Approachが、中長期では実は最も大切であることに気がついた。Holdenのフレームワーク(下図)が示すとおり、経営戦略から人材開発(HRD)へ続く矢印は双方向なのである。

日本の人材開発の特徴
日本企業の人材開発は独特である。その特徴は以下のとおり。
- マネジメント層や技術教育も含めて企業が幅広く職業教育を行う。
- 縦軸が組織階層、横軸が教育内容の箱型育成体系。階層別に整然と教育内容が 区分されていることが特徴。非常に珍しい。外国ではトレーニングコースのリストがあるのみ。
- 階層別教育。同じ組織階層の従業員には同じ教育を行う。背景には長期雇用があり、企業側が意思決定するローテーションをスムーズにする目的がある。
- 人材開発に対する人事部門の強い権限。他の国であれば個々の従業員がどういったトレーニングを受けるかは個人が決める、あるいはライン間で決めることが基本である。教育予算を人事部門が持っている予算構造が根底にある。
終身雇用と年功序列を前提として、会社全体のローテーションと画一的な階層別教育で人材開発を行ってきた。前提が崩れてきた中で、日本企業はこれからどんな人材開発を行えば良いのだろうか。それがこのテーマ6.の主題である。
人材開発を行う意義
さて、人材は当然辞めることもある。人材開発施策を行っても、投下コストを回収できない恐れはある。それを承知の上で、企業はなぜ個の成長に投資するのだろう。それは成長機会が提供されない企業に、優秀なプロフェッショナルは集まらないからである。
次回は、開発すべき「能力」とは何かを見ていきたい。

参考文献
- 須田敏子『HRMマスターコース―人事スペシャリスト養成講座
』
- 釘崎広光『トータル人事システム』
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