SPIなどの適性検査は、総合的な深い人物理解に近づくためのもの

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適性の測定

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今回は適性について考えたい。日本企業の採用における適性、そして人の測定ということを考えるとき、外してはならない人物がいる。リクルートの元人事役員である大沢武志さん。彼は『SPI』という適性検査を作り日本の採用を根底から変えた人だ。いったいどんな思想で適性検査を作ったのだろうか。大沢武志『心理学的経営―個をあるがままに生かす』を見ていこう。

 

 

パーソナリティの測定

採用選考においてパーソナリティをテストで測ること(性格検査)は一般的であるが、その位置付けはどう考えるべきだろうか(パーソナリティとは、G.W.Allportの定義によれば「環境に対するその人独自の適応の仕方」を規定するもので、一人ひとりの行動様式、存在様式をあらわす)。

大沢さんは、あくまでも本人の「個性の発揮」をたすけて尊重するために利用すべきだ、と言う。

さらには本人に結果を公開し、本人の利益のために利用されるべきものと考えるべきであって、たとえばある種情緒的適応障害の徴候を発見し、組織から排除することだけを目的に、それを当然のように適用することは容認されるべきことではないのである。

逆だと考えている企業も、多いのではないだろうか。つまり、本人には開示せず企業の利益のために利用し、特定の有害な徴候を発見して排除するよう適用することは、当然だと思わているかも知れない。

しかし、それは違う。パーソナリティ・テストとは、

面接試験を中心とする採用選考の場面についていえば、主観的な理解に偏りがちな人物評価に、より客観的なデータをプラスすることで、

「総合的な、しかも深い人物理解」に近づくために用いるべきものだ。なぜならば、

パーソナリティテストのデータをもとに、社員適性としての評価に結びつけて、序列をつけたり、職務適性判定の情報に読みかえることは実際には難しい。対象職務を厳密に分析・定義し、職務要件を明確に定めた上で、職務成功度とテストデータとの関連を裏付ける妥当性の保証がない限り、適性判定にはなじまないというのが、筆者のこれまでの人事テストのなかでの経験からの結論と言わざるを得ない。

ここを読んで驚かれる方も多いのではないだろうか。適性検査を日本に広めた第一人者は、パーソナリティ・データを適性判定に読み換えることは難しい、と結論づけているのである。

パーソナリティ・テストのデータは、それぞれの個人の企業人としての内的な適応(自己適応)との間に、むしろ意味のある関連を見い出せることが多い。したがって、評価情報というよりは、本人の自己理解を促進したり、職場適応を援助する道具として位置づけられることが好ましいと考えている。

基礎能力の測定

一方で大沢さんは「どの仕事に就くにせよ、基本的に要求される知的能力」は存在しており、測れるという。それはこんな能力だ。

新しい知識を学習し、応用する能力、複雑な事態から問題を把握・分析し判断する能力、論理的に推理・洞察する能力等、いわば知的適応能力

これが、SPIにおける基礎能力(言語・非言語)である。入社10年後および5年後の追跡調査を行なった結果、

どの部門も、また総合的にみても昇進スピード、幹部としての将来性、適性の幅などの人事評価の高いグループの採用時の基礎能力検査の得点が高かった

適性検査と面接

パーソナリティ・テストによる人格診断の情報は複数の尺度上にプロットされたプロフィールを解釈するという定性的なアプローチになじむ情報であって、得点を固定した情報として処理し、デジタル情報に追い込むべきではないのである。

パーソナリティ・テストを採用選考で利用する際には、読み取り・解釈に精通した人が読み取ることと、先ほど述べたとおり人物理解をより深めるためのデータとして活用することが重要である。

適性検査によって得られる情報、履歴書や職務経歴等当人に関する重要な情報をすべて総合し、矛盾も含めて最終的な評価と判断を下すのが人間による面接の意味である。

個を生かすために、より良く「見る」ために使え、私はそう解釈している。

適性の現実

産業心理学者が長年追い続けてきた「適性」というテーマも、これまでいくつかの観点から述べてきたように一つの正解に明快に到達できるような代物ではないと言わざるを得ない。

何か物差しを当てれば、適性が誤差なく判定できるというような単純な客体ではなく、能力、興味、性格、価値観、意欲、職務経験等々、個人的な属性の関与する範囲も多岐に及ぶ。

簡単な答えに飛びつかず、複雑な人間を「あるがまま」に見る。これが大沢さんの真髄である。

ある観点から一つの結論を出すことは、同時に別の観点からは、新たな問題を生み出す結果になる。

そのジレンマの繰り返しが企業人事の現実の世界であり、その矛盾の渦中で相克に耐える人事スタッフの苦悩は適性人事をすすめる上でも変わりはないのである。

適性検査のデータは、HRテックが叫ばれる中で様々な人事データは、今、正しく扱われているのだろうか?安易な決めつけの後押しをしてしまっていないだろうか。

適性検査を販売している、ある企業の営業の方にこの内容をレクチャーしたことがある。その方は驚き青ざめておっしゃっていた。

「決してやってはならない、とここで言われていることばかり、我々はやってしまっています」

人事という役割を担う人には、正しく葛藤して欲しい、と願っている。

 

次回はリソースフローの入り口「採用」の最終回として、選考と決定について考えたい。

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テーマ5.リソースフロー

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