筒井康隆は天才だ
本を読んでばかりいる子供だった。小学生の頃はキン肉マンをはじめとした漫画が主だったが、中学生になって筒井康隆にはまる。
何冊か読んで「この作者は天才だ」と思った。小説とは、言葉とは、突き詰めるとこんなことができるのか。ひとりでここまで自分の世界を考え抜いた人がいるのだ、と溜息。
そして自分の思考がまだまだ浅く、深く潜れていないと悟る。虚構を狂気のように考え抜いた人が現実にいる。そのことが私を安心させてくれた。

本の森の狩人
本ばかり読んでいたのは、図書館に勤めていた母の影響が大きくあるだろう。母子の時間は会話よりも同じ机で別の本を読んでいる時間のほうが何倍も多い。その机には最新の本や彼女のお気に入りの本が常に机に積まれていた。
下の写真は筒井康隆の書評「本の森の狩人 (岩波新書)」の目次である。母に、ここで取り上げられている本を全て借りてきて欲しい、と頼んだのは1993年、高校三年のときである。

筒井康隆の面白い紹介とともに読んだ文学たちは至福の時間をくれたが、特に第11回河合隼雄「心理療法序説」は心に残った。筒井康隆からは多くのことを教わったけれど心理学を知れたのは大きい。この先、河合隼雄にどっぷりハマるのは、32歳でコンサルタントになってからなので15年後だ、すでにここで種が撒かれていたのだ。
さて、この「本の森の狩人」は書評だが、筒井康隆が書く限り、ただの書評ではありえない。順に読み進め、第39回まで来た時、あなたは「あっ!」と叫ぶことになるだろう。書評でこんなことをするのか、できてしまうのか。
お勧めするなら
筒井康隆を読んだことのない人にお勧めするとしたら、感動作の旅のラゴス 、虚構の純文学虚航船団
、言葉の実験小説残像に口紅を
、心理学を駆使したパプリカ
や七瀬三部作、どの本も素晴らしいが「最後の喫煙者―自選ドタバタ傑作集」が筒井康隆の鋭さを感じられて良いかも知れない。特に「ヤマザキ」には驚愕されるのではないだろうか。
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