終身雇用は企業と個人を、良くも悪くも「一体」にする

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終身雇用

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前回は、人材計画や雇用調整について考え、生身の人、HumanをResourceとして扱うManagementの難しさを味わった。今回は人を大事にした日本の終身雇用について見ていこう。

高度経済成長期の日本では、終身雇用、年功序列の企業に勤めることこそが安定であった。そこから飛び出すいわゆる「脱サラ(脱サラリーマン)」は非常にリスキーな選択だ。それを象徴的に歌った「およげたいやきくん」というヒットソングがあるが、自由を求めて終身雇用から飛び出したたいやきくんは海に沈んでしまう

終身雇用とは何か?

終身雇用の合理性と限界について見ていこう。奥林康司・平野光俊・上林憲雄『入門 人的資源管理』を元に今出智さんがまとめた内容が分かりやすく味わい深いためご紹介したい。

終身雇用の合理性

終身雇用の原型が成立したのは第二次世界大戦後まもなく、と言われている。企業組織を維持したい企業と自分の生活向上を実現できると考えた労働者の利害が一致し、組織への一体化を促進するような雇用管理制度が望ましいという認識が生まれた。以下のような合理性があった。

  • チームで仕事を行う際の効率維持
  • ノウハウの共有・伝承
  • 企業内でのより効率的な人材配置
  • 教育訓練投資の回収
  • 安心の提供によるコミットメントの増大

終身雇用を維持するメカニズム

終身雇用と年功序列を同時に成立させるには企業が成長することが条件になる。しかしそれが常に成立するとは限らず、実際にはそれを可能な限り実現するためのメカニズムが組み込まれてきた。

  • 対象者の限定
  • 正社員に対する人員整理の方法(定年など)
  • 雇用調整
  • カテゴリー別格差の利用(高卒・大卒の区分けなど)
  • 昇進における柔軟性の組み込み

終身雇用の限界

日本は解雇権濫用法によって解雇するために厳しい条件を満たすことが求められる。企業成長が続いている間はそれで問題はなかったが、近年では長期的に成長し続けることが極めて難しい。また年齢の高い世代が多くなると、年功序列を実現するために必要なポストを増やすことも難しい。また以下の論点もあり、終身雇用と年功序列は限界を迎えつつある。

  • グローバル化による人件費の変動費化の必要性
  • 労働力需給のミスマッチ
  • 出向・転籍活用の困難化

一人ひとりと向き合う制度・施策

終身雇用と年功序列は、マネジメントコストが圧倒的に安い一律に同じ施策で良いからだ。また多少の不公平感も会社の成長さえあれば帳消しにできた。高度経済成長期には「売上はすべてを癒す」というダイエー創業者中内功の言葉も真理だった。しかし今は成果の見込みは不透明で、労働観も仕事も多様であり、もうそのマネジメントスタイルは通用しない

さあ、では一人ひとりと向き合う制度や施策はどう考えれば良いか、小野泉・古野庸一『「いい会社」とは何か 』に教えて貰おう。

「アップ・オア・アウト」は昇進できなければ退社、という一見厳しい人事制度である。終身雇用の逆として位置付けられる。理想的なピラミッド組織が保てて、優秀な人だけが残るという企業側の都合は当然あるが、働く個人にとっても実は意味がある。例えばある優良企業では、30歳ごろに活躍しそうもない人に辞めてもらうことを徹底している。40歳を超えると転職が困難になるためである。この企業は不況期もリストラはしない。組織と個人双方のことを考ているのだ。

「終身雇用」が本当に一人ひとりにとってベストかどうかは分からない。外で働くことも含めて検討する機会(キャリア研修・面談など)を作ることが、より人を大切にしているのではないだろうか。

これからは、自律した「たいやきくん」の時代なのだ。

次回は、定着施策について考えたい。

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