満足を生み出す内的報酬
以前、報酬とは働くことによって得られるものすべて。内的報酬は満足を生み、外的報酬は不満をおさえると述べたが、今回からは満足を生み出す内的報酬についてお伝えしたい。
積極的な満足を生み出すのは仕事自体である
どのような仕事が満足を生み出すのだろうか。大沢武志『心理学的経営―個をあるがままに生かす』では、内的報酬となりうる仕事設計の原則としてハックマンとオールダムの「職務設計の中核五次元」をあげている。
ハックマンとオールダムの「職務設計の中核五次元」
- スキルの多様性:必要とされる能力や技能が多様である。
- タスクアイデンティティ:初めから終わりまで一貫して携われる仕事である。
- 仕事の有意義性:周囲の人々への影響力、仕事の意味が自覚され、重要だと感じる。
- 自律性:自由裁量の範囲が大きく、仕事の結果に責任を感じられる。
- フィードバック:仕事の成果を上司や周囲を通じて知ることができる。
※ただし、当人の能力と技能が著しく低い場合、成長への欲求が弱い場合、給与や作業条件など環境条件に不満を持っている場合は、内的動機づけは高まらない。
また、著者の大沢武志が実際にリクルートの人事役員として実践してきた「若者を仕事に駆り立てる」内的動機付けの心理的条件は以下のとおりだ。
㈱リクルート「若者を仕事に駆り立てる」内的動機づけの心理的条件
- 自己有能性:挫折感や自身の喪失などの葛藤を乗りこえ自己効力感を体験できること。
- 自己決定性:自由裁量の幅が大きいだけではなく、自己責任性を伴う。
- 社会的承認性:努力、苦労、成果が認められることで心理的充足と情緒的安定を得る。
これは自律したプロフェッショナルとも良く似ている。
満足できる仕事は魅力的な目標のデザインから
魅力的で「やんちゃ」な目標が人を動かすで見てきた通り、魅力的な目標と報酬のサイクルがモチベーション促進の構造である。

IT Management Journey vol.4「個人の意欲をどのように高め、組織の力に転換していくか?」でも議論したとおり、モチベーションとは「これをやってみよう、という思いの強さ」である。
だからこそ、リーダーには「こっちへいこうぜ!」と方向を魅力的に「指し示す」こと(モチベート)が求められる。組織での目標は会社から与えられるものでも、自分がやりたいものでもなく、双方で握手するものだ。目標設定の機会は、正に「指し示す」ことで「モチベーション」を上げる、最高にクリエイティブな瞬間なのだ。
そしてそのモチベーションを維持し促進するのは、日々のフィードバックである。
さて、小野泉・古野庸一「「いい会社」とは何か 」によると、日本では「仕事のやりがい」が年々下がっているという。なぜ仕事のやりがいが下がっているのか、次回はそこを取り上げてみたい。

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