たとえ満足できなくても、納得できるのが、正しい賃金

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賃金の変遷

image以前、外的報酬とは不満をおさえるものだと述べた。では不満にならない、納得できる賃金とはどんなものだろうか?

今回は複雑な日本の賃金を深く知るために日本の基本給の変遷を辿ってみたい(基本給は等級に基づいて決定されるため以前紹介した等級の歴史にも深く関連している)。

 

以下、各基本給についての説明は、釘崎広光「トータル人事システム」を元に、神谷恭子さんが要約したものである。とても分かりやすいため、許可のもと使用させていただいた。

 

基本給の変遷

年功給

年功等級に紐付く年功給体系の基本給は、学歴が加味された年齢給と勤続給とからなる。 年功給体系は、従業員に対して生活面での安定感を与えるという点、長期勤続を促すという点において優れており、従業員の平均年齢や勤続年数の低い時代においては、経験を積むことによって賃金が上昇するという仕組みはコスト管理上も有利だった。

一方、年功給では、仕事の内容や技能の向上とは無関係に賃金が上昇していくため、安定がききすぎて仕事に向かう意欲を鼓舞しない恐れがある。

昭和30年代の高度経済成長以降、技術革新などにより経験=熟練といった関係が崩れていく中で、年功給体系の問題点が指摘され、40年代前半にかけて米国に倣い職務給の導入が積極的に試みられた。

職務給

職務等級に紐付く職務給とは、現在遂行している仕事に対して支払われる賃金であり、自らが現に従事している職務がどの等級に区分されているかによって決まる。 職務給の長所は、賃金を決める基準の明確性と「同一価値労働同一賃金」の原則に基づいた公平性と合理性にある。高齢化・高勤続化・高学歴化といった属人的条件の変化の影響を受けることがない。つまり、インフレの心配がない。 一方で、短所は能力が向上しても上位等級の職務に就かない限りは賃金が上昇しない点である。能力開発意欲を損なう恐れがある。このため、日本においては職務給は定着に至らなかった

職能給

1975年(昭和50年)以降、能力主義の等級制度である職能資格等級及び職能給体系が、各企業において相次いで導入された。職能給とは職務遂行能力によって決める賃金のことである。資格ごとに賃金の上限額と下限額を設定し、下限額から上限額へと昇給させていく「範囲給(レンジレート)」の仕組みをとるのが一般的である。

年俸制

年棒制とは、賃金決定をいかなる時間単位で行うかという賃金の決定形態であり、時給制や日給制、月給制と比較するべきものであるが、実態としては、業績主義の賃金ということになる。

企業業績への直接的な貢献をより反映させた賃金体系ということができる。 年棒制導入への関心が高いのは、従業員の意識改革を強力に推進しうる、という期待があるからである。「年棒制」を謳うことによって、賃金制度の改定ではなく、賃金制度の変革である、とのメッセージを伝えるものとなる。

しかしながら、賃金制度はそもそも大改革にはなじみにくく、年棒制という名称を用いながらも実態としてはこれまでの賃金制度と変わらないものになっているケースも多く、そのことが年棒制の定義を困難なものとしている。

 

日本の賃金の変遷まとめ

歴史上、職務給は根付かず、年俸も名ばかりとなり、職能給が40年以上主流となっている。職能給はその元となる職能資格等級自体がそもそも曖昧になりやすい上に、これらの賃金体系を2つ以上組み合わせて基本給としている企業も多い(職務給+職能給など)。さらに日本ではボーナスや手当ての割合が多くいったい何に対して賃金を払っているのかを、あえて複雑にして総合的にぼやかしているようにさえ見える。

給与明細を見て、自分の賃金は何に対して払われている、と明確に言える人はどれだけいるだろうか?しかし働く人にとっては、それでも普段は別に困ることはない。そもそも興味がない人も多いだろう。

 

納得できる賃金

実際に働く人が賃金に不満を抱くのは、上で述べた企業側の都合とは、まったく別の次元にある。それは例えば、同窓会で高校のクラスメイトと会い、貰っている賃金の差に驚いた時だ。他の会社の同業者と飲んでいて、貰ったボーナスの差にガッカリした時だ。これは自分で妥当だと思える水準の賃金をもらえていない、という不満である。

この不満自体は根本的には解消されない(企業には出せる人件費の限度があり分配の公平感の問題となるからだ)。しかし、丁寧な説明を聞いて、納得することはできる手続きの公平感、関係の公平感の問題は解決できるからだ)。

複雑な賃金体系とは、納得のための説明体系でもあるのだ。

もし、給与明細を見ながら、その人に賃金を説明するとすれば、それは等級と評価結果からの繋がりの説明であるはずだ。職能等級が3級で能力評価がAだから、テーブルに照らすと30万円なのですよ、と。完全な満足は得られないかも知れないが納得することはできるだろう。

納得できる賃金とは、登りたくなる等級と、公平と思える評価の結果に他ならないのである。

 

次回からは内的報酬について考えていきたい。

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テーマ4.報酬