公平感は受け取る側の主観。相互の信頼関係に左右される

公平感と信頼関係

このテーマ3.では、人事評価について論じてきた。最後に評価のまとめとして、意欲と公平感と信頼関係について述べたい。

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評価で意欲が上がる瞬間・下がる瞬間

これまで、評価者は「主観」をピカピカに磨かねばならないと、上司が「見ている」ことが評価の納得感において重要だとお伝えしてきた。評価における上司とのコミュニケーションは、部下にどう映っているのだろうか

RMS Message vol.45の調査結果が非常に興味深いので少しながめていただきたい(下図)。

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評価をめぐる上司とのコミュニケーションにおいて意欲が上がった瞬間 〈自由記述/括弧内はコメント数〉
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評価をめぐる上司とのコミュニケーションにおいて意欲が下がった瞬間 〈自由記述/括弧内はコメント数〉

意欲が上がったときと、下がったときの違いは、上司が「何を言っているか」にあまり関係していないように見える。

例えば「具体的にどこが不足しているか言ってもらえた」「至らない点だけを列挙された」というのは上司がやったこと自体は同じだ。違うのは上司との信頼関係である。普段「よく見てくれている」と感じるかどどうかが明暗を分けているのではないか。

 

公平感とは受け取る側の主観

評価において「公平感が持てない」という声は多い。公平感とは受け取る側の主観である。どんなに人事制度が精緻で合理的であっても、上司が正しく伝えても、納得するとは限らないのだ。

しかし、諦めてはいけない。必ずできることがある。

「公平感」の研究について見てみよう。須田敏子『HRMマスターコース―人事スペシャリスト養成講座』によると、公平感は大きく2つに区分される。

報酬の分配結果(宝の山分け)に関する「分配の公平感」と、報酬を決めるプロセス・手続きに関する「手続きの公平感」だ。

分配の公平感 Adams 1965

  • 人は自分が仕事に投入したものすべて(努力・経験・スキル・知識など。インプットと呼ぶ)と仕事から得たものすべて(賃金・昇進・昇進に伴う特権・社会的ステータスなど。アウトプットと呼ぶ)の割合と、他者のインプットとアウトプットの割合を比較して、同じ比率だと感じたときに公平感を得る、異なっている場合には不公平だと感じる。
  • 不公平を感じる場合には、人は公平感を得られるように様々な働きかけを行う。特に自分のアウトプット比率が低いと感じたときは何らかの行動を起こすことが発見されている。それでも公平感を達成できない場合はその場を去る(退職する)、仕事に対するモチベーションを下げるなどの結果になる。

手続きの公平感 Brockner and Wisenfeld 1996

  • 分配に対して公平感を持っている場合は、人は手続きの公平感に関心をもたないが、分配の公平感が崩れると手続きの公平感に関心を持つ。
  • 手続きの公平感が保たれている場合はひどくモチベーションを低下させることはないが、分配の公平感も手続きの公平感も実現できないとモチベーションが低下する。

企業では資金もポジションも制限があるため、誰もが満足する「分配の公平感」の実現は困難だ。しかし、手続きの公平感は実現可能であり、人事評価制度の設計において、非常に重要となる。主な手法としては、以下があげられる。

  1. 評価内容の透明性を高める
    評価項目・評価基準の公開、評価者の公開、評価結果の公開
  2. 評価プロセスの透明性を高める
    被評価者の参画(自己評価の提出・上司との評価ミーティングの実施)

手続きの公平感のうち、被評価者に対する対応、特に人間関係に焦点を当てた「関係の公平感」が近年着目されている。

丁寧なフィードバック、意見を真摯に聞こうという姿勢が「直接接触する」評価者である上司や人事スタッフから感じられることで公平感は向上させることが可能になるのだ。管理職や人事スタッフの人選と教育が問われることとなる。

 

それぞれが、なすべきこと

透明性の担保、丁寧なフォードバックを行う仕掛け、評価者の育成に、都度のフォロー。人事制度にできること、人事部門にできることはまだまだある。可能な限り使いやすい「道具」を評価者に渡すことが、人事の役割だと私は思っている。

そして上司(評価者)は主観という評価眼をピカピカに磨き続けるべきだ。マネジャーの仕事は、メンバーが最高に貢献できる「環境の創造」であるからだ。

しかし片手だけでは握手できない部下(被評価者)も主体的に参画しなければならない。責任はそれぞれに均等にあるのだ。

小野泉・古野庸一は「「いい会社」とは何か 」でこう言っている。

信頼は一方的な感情ではなく「相互作用」
信頼は、まず信頼することから始まる
それも自分を信頼することから始まる

それぞれが自律し、自分を信頼したプロフェッショナルでなければ、信頼関係は築けない。

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テーマ3.評価
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