評価者は「主観」をピカピカに磨かねばならない

よく「見る」ために

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以前、「成果は測れても、能力や意欲は測り難い。日々の行動をよく「見る」こと」と述べた。今回はその「行動をよく見る」とはどういうことかを考えたい。

成果は目標管理で評価するが、能力や意欲は「行動」した事実から評価する。行動の評価はいくつかの呼び名がある。行動評価、能力評価、コンピテンシー、などだ。それぞれ異なる考え方だが「行動」を見て評価するという意味では同じである。まずは共通のポイントについて話を進めたい。

 

1.一次評価者が見る責任を負う

行動を評価するのは一次評価者、つまり直属の上司である。一次評価者の評価を二次評価者が修正し、三次評価者や人事や経営層が最終調整のうえ決定する、ということがよく行われているが、このような方法は問題が多い。上位者の評価のほうが正しいという保証はなく、評価者と被評価者の組織的な距離があればあるほど評価の正確性は薄れていく。実際の現場を見ていない人、行動を知らない人には評価はできないのだ。

一次評価者者になるということは、そのメンバーの評価に、ひいては給与や処遇、さらには中長期の成長に責任を持つ、ということだ。評価者になったばかりの上司に対して研修を行うことがあるが、そこで最も学ぶべきことは評価の方法やツールの使い方ではなく、その責任と役割についてである。

よくある話だが「私は君を高く評価していたんだけど、上が勝手に変えてしまって」と一次評価者が責任逃れの発言をすると、個と組織の信頼関係は一発で破壊されるだろう。

一次評価者は自分の判断が覆されそうになったら上司と戦うことも必要であるし、部下の成長のために嫌われてでも厳しい評価を自分の言葉で伝えることも必要なのだ。

 

2.見ることができる範囲のチーム編成を行う

一次評価者の下に何十人ものメンバーがぶら下がっていることがあるが、これでは評価は機能しない。そんな人数の行動を見れるはずがないからだ。見ることができる範囲(マネジメントのコントロールスパン)は5名から7名と言われている。それを超える部下を持っている場合は、チーム編成を考え直した方が良い。

実際には、リーダーを任せることができる人員がいないという問題もあるだろう。その場合は一次評価者は被評価者の行動を知っている現場のリーダーから情報収集を行うことだ。可能であれば評価面談にも同席してもらう方が良い。そしていずれは次を任せるリーダー育成を行なっていきたい。

 

3.評価眼をすりあわせ会議で磨きあう

評価とはどこまでいっても主観である。ここに人間が人間を評価する難しさがある。つまり同じ行動をとっていても評価者によって必ず差はでる、ということだ。具体的には下のようなエラーが起こる。

  • ハロー効果:ひとつのことが良いと全てをよく評価する、またはその逆
  • 中心化傾向:どの人にも平均点を与える
  • 直近効果:評価期間全体ではなく、最近の出来事を大きく評価する
  • 厳格化・寛大化傾向:厳しすぎる、甘すぎる

その前提の上で、評価者による評価のばらつきをできるだけ最小限にとどめる1つの方法が「評価基準すり合わせ会議」である。一次評価者が集まり、お互いの評価の基準をすり合わせることで「主観を磨き合う」のだ。

具体的には、同じ等級のメンバー(一人前の中堅クラスであることが多い)を例にとって、どのような行動事実から、どう評価したのかを俎上にあげて議論がする。他の評価者の判断を知る中で、自分が見れていない範囲や、同じ行動についての甘い判断、厳しすぎる判断などが見えてくるだろう。

この「すり合わせ会議」こそが、「自社にとって価値ある行動」とは何かを考え、主観を磨き合う、本質的なマネジメント力向上の場となる。

 

次回は、能力評価、行動評価、そしてコンピテンシーの詳細について考えたい。

参考文献:
釘崎広光『トータル人事システムハンドブック』

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