相対評価の弊害
評価者だって辛いのだ
以前述べたように、人事評価は「やってもやらなくても同じ」という悪平等をなくすもので、格差をつけるためのものだ。しかし上司(評価者)だって人間である。厳しい判断をして部下(被評価者)に嫌われたくない。
だからついつい評価が甘くなる 「寛大化傾向」や、ほとんどの人が真ん中の評価(例えばSS・S・A・B・CのうちA)に偏る「中心化傾向」が起きる。
そこで格差を維持するための仕組みが検討されることになるが、そのうち1つが相対評価である。
相対評価という方法
相対評価では、評価結果の分布を一定に保つ方法が取られる。(例えば、SSは全体の10%、Sは20%、Aは40%、Bは20%、Cは10%など)。こうやって枠を決めてしまえば確実に格差がつく。
序列が明確になるため、昇進昇格や限られた給与原資の分配の根拠としても使い勝手が良い。そして競争を煽ることで成果が上がる側面もあるだろう。
しかし、これは限られた社内競争でしか機能しない。相対評価の結果から本人に伝わるのは「君は彼より上だった、彼女より下だった」という情報だけだ。ライバル心から奮起してくれるかも知れないが、そんなことをしてるうちに他社に市場を持って行かれるのではないか。比較対象が、視野が狭すぎるのだ。
また、各社の現場でよく聞くのはこんな不満だ。上司に評価結果を伝えられたが納得できない。
「本当はAにしてやりたかったのだけど、枠がいっぱいなので、今回はBにさせてくれ」
「君にするか彼にするか迷ったのだけど、今回は彼にSSを譲ってやってくれ」
相対評価という仕組みに振り回されてしまって、まったく本人を「見て」いない。上司も辛いのかも知れないが、これでは信頼関係は築けないだろう。
行うべきは絶対評価
上司には、部下が進む道を「指し示し」て欲しい。そのあるべき姿と現状のギャップを「絶対評価」すべきだ。
特に、従来のやり方が通用しなくなるフェーズでは、社内や部署の相対評価はどんどん意味をなくしていく。比較した対象が正しいとは限らないからだ。
次回は、その絶対評価の代表的な方法である「目標管理(MBO)」について考えたい。
魅力的で意義ある「目標」を、部下とともにデザインするクリエイティブな能力が上司には必要になる、と予告しておこう。
次回は、目標管理について。
参考文献:
守島基博『人材マネジメント入門 日経文庫B76』

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