職務等級
日本では、職能資格等級が最も普及しているが、その曖昧さによるデメリットを解消するために、職務等級や、職能と職務を合わせた等級を導入する企業も増えてきている。ここでは職務等級について詳しく見ておこう。
職務等級の特徴
職務等級は、保有能力や過去の実績などに関わらず、従事している職務によって等級が決まる「現在仕事基準」の等級制度である。
アメリカでは1964年の新公民権法により、差別リスクが大きくなったこと、全国に人材市場が広がったことから職務等級が普及した。
差別されていると言われるリスクを低くするために、徹底的に仕事しか見ない、人は評価しない仕立てとなった。
職務ごとに数枚の詳細な職務記述書を作成し、科学的に評価して職務をポイント化してランキングする。

職能資格等級との違い
日本の職能資格との一番の違いは、「昇格」と「昇進」を分ける概念がないことだ。職務等級の「昇格(プロモーション)」はシンプルに職務の上昇(職務内容の変化)に伴って生じる。
職務等級のメリット
職務等級のメリットは、職務レベルと賃金レベルを直結できる点である。本人の属性に関わらず、現在従事している職務の価値によって等級と賃金が決まるというシステムは合理性が高い。
職務昇進の努力が期待できることに加え、制度の運用において恣意性が入ることがなく納得感が得やすい。
また、外部の労働市場に合わせた職務ごとの賃金を提示できるため、人材を採用しやすいことも大きなメリットである。
職務等級のデメリット
アメリカでは長く職務等級が運用されてきたが、職務記述書に記載された以外の仕事や、自分の責任範囲以外の仕事を行わなくなるなど、組織が官僚的になる弊害が指摘されている。
実務的には、職務記述書の作成には多大な時間とエネルギーを要するため専門のコンサルタント会社などに委託することになる。しかも職務記述書は一度作って終わりではなく、環境や企業の成長状態によっては頻繁に更新しなければならない。運用負荷は膨大となる。
次回は、等級のまとめである。
参考文献:
高橋俊介『ヒューマン・リソース・マネジメント (ビジネス基礎シリーズ)』
八代充志『人的資源管理論<第2版>』
釘崎広光『トータル人事システムハンドブック』
須田敏子『HRMマスターコース―人事スペシャリスト養成講座』

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