「職能資格」は曖昧で使いやすい等級

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職能資格の詳細

職能資格の特徴を詳しく説明したい。職能の理念については前回の「人間の成長を重視した「職能資格」は、日本で最も普及した等級」を参照。

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1.ポスト不足に対応した「昇進と昇格の分離」

年功・職階制度の行き詰まりは、ポスト不足であった。会社に長くいる人が自動的に課長、部長になる仕組みは、戦後の年長者が少ない状態では機能した。それは戦争で成人男性がいなくなっていたからだ。その年齢ピラミッドの構造が変わり、椅子が足りない(ポストがない)事態となった。

日本では、名刺に何の「肩書き」が入っているか、が重視される。いつまでたっても課長になれないことは、当時の働く人の不満を招き、意欲の低下につながった。

これは意外と現代でも変わらないかも知れない。私はシニアコンサルタントとして働いていた頃、叔母から「いつになったら課長になれるの?」と聞かれてショックだった記憶がある。それまで課長になるべきとも、なりたいとも思っていなかったのだが、そう見られてしまうという事実からは影響を受けたと思う。

職能資格は、このポスト不足を解決するために「昇格」と「昇進」2重のランキングシステムとなった。昇格(資格等級があがること)昇進(役職がつき課長や部長になること)とを分離したのだ。

資格等級の「昇格」は、必ずしも役職の「昇進」と連動してない。役職ポストには定員(椅子の数)があるが、職務遂行能力の資格には定員がないため理論的には無限に昇格ができる。

資格等級に格付けされれば、組織上の職位につかずとも名刺などに資格名(主任、主事、参事、参与など)を使用できるため、意欲の低下防止が期待できる。

これによって、組織上の必要性に基づくポジションの変更を進めやすくし、人材活用の柔軟性を高めることに繋がった。

 

2.一体感と能力開発意欲の喚起を狙った「全社一律の能力評価」

年功・職階制度のもう一つの欠点は、頑張りが認められないこと、であった。やってもやらなくても処遇が変わらないことは悪平等となる。

職能資格では「能力を上げれば給料が上がる」ことによって、 能力開発への努力を喚起している。
働き方の異なる社員を「一律共通の評価基準」で評価し格付けすることで、公平性が強調され「多様な社員が協力し合う」一体感が期待できる仕組みとなっている。

また、職種によって評価基準が変わらないため、異動配置が行いやすく組織の流動性が担保されているというメリットもある。

一方で、評価の納得感という点では問題が沢山残っている。多くの場合、職能資格の等級定義は、抽象度が高く、そのために昇格管理が甘いものとなってしまっている。

部長と同等の給与を貰っているが役職のない年輩社員など、役職につかない管理職の増大は、このためである。ゴマスリの台頭も職能の曖昧さゆえかも知れない。

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登るためには階段が必要である。たとえ風化して曖昧であっても、先人が築いてくれた財産なのだ

3.終身雇用を前提とした「積み上げ卒業方式の昇格」

職能は「過去の蓄積」が問われる等級である。

今の資格の職能等級を満たすと、1つ上の資格に昇格できる「卒業方式」であり、多くの場合、降格という概念はない。今の資格内での経験年数が昇格要件に含まれることが多いが、この経験年数の存在が昇格の運用を年功的なものとしてきた(欧米の職務グレードでは滞留年数は悪い評価となっても、昇格要件となるケースはまず見られない)。

職能資格と役職との間に一定の対応関係を持たせる ケースがほとんどであり、昇格を必要条件として昇進を行っている。どれだけ成果をあげていても、経験年数が足りなければ昇格はできず、いわゆる抜擢昇進の実現を阻む仕組みとなっている。

また職能の給与終身雇用を前提とした社内基準(社内で積み上げてきた結果)であるため、外部労働市場から「時価」で人材を獲得するときに整合がとれないというデメリットも大きい。

さて、次回は欧米で発展してきた職務等級を取り上げたい。

参考文献:
八代充志『人的資源管理論
釘崎広光『トータル人事システムハンドブック』
須田敏子『HRMマスターコース―人事スペシャリスト養成講座

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テーマ2.等級