先駆者『キン肉マン』の方法

生まれてはじめて買った本はキン肉マンのコミックスだった。1982年、6歳の頃である。

あまりの面白さに夢中になって隅から隅までを舐めるように読んだ。発売されていた10巻までをすべて読み終わると、コミックスの続きを待てずに、連載している週刊少年ジャンプを読むようになった。

合言葉は「友情、努力、勝利」。
毎週火曜日が本当に待ち遠しかった。本屋の前で開店をワクワクして待っていたことも何度もある。

キン肉マンは先駆者である。いくつも画期的な「方法」を生み出した。激動の週刊連載のなかで試行錯誤の連続だったのだろう。今では他の漫画が当然のように使っている方法もキン肉マンから生まれたのだ。

  1. 超人募集

    読者から登場人物を募集する「超人募集」。ラーメンマンやウォーズマンなどの人気キャラクターも読者が考えたデザインだ。ここに応募していたことがきっかけでクリエイターになった、という話も聞く。ワンピースの作者尾田栄一郎も少年時代に「パンダマン」を応募していたことは有名だ。

  2. 超人総選挙

    読者がハガキで登場人物に人気投票する「超人総選挙」。主人公のキン肉マンが絶対1位をとれない、連載にほとんど登場していない(3コマしか出てこない)レオパルドンに固定ファンがいる、など数々のお決まりがある。
    初期は人気キャラクターだったテリーマンが11位に転落したとき「ノー・コメントだ!」という名台詞を残した。

  3. 超人強度

    キン肉マンは95万パワー、ウォーズマンは100万パワー、バッファローマンは1000万パワーのように、キャラクターの強さを定量的に表す。その方法はドラゴンボールでの戦闘力、ワンピースでの懸賞金に受け継がれている。

キン肉マンから生まれた方法たち。その多くは漫画のダイナミクスを読者と共有するためのものだ。毎週「読者」を楽しませること。作者ゆでたまごは本当にここだけを考え続けてきたのだ。
これが、面白くならないわけがない。

1988年、私が12歳のときに連載が終了。私の小学校卒業とともにキン肉マンはキン肉星へ帰ってしまった。

そして24年の時が流れ。

2012年、なんと連載が再開した!
私は36歳になっていた。漫画への情熱はすっかり冷えていたが、懐かしさから新刊38巻を手に取った。

・・・面白い。

あの頃と同じように面白い。いや、ひょっとすると今の方が面白い。・・・これは凄いことだ!
私の中の小学生男子は、連載再開で目を覚まし、七人の悪魔超人が再登場したときに飛び起き、悪魔将軍が復活したときには大喜びで駆け回っていた。
聞いた話では私と同世代のキン肉マンで育った方が編集者だそうで、作者も忘れている設定をファンの目線からつなげる手伝いをしているとのこと。

この復活劇の舞台に、作者ゆでたまごはWEBで無料連載(週刊プレイボーイweb comic)という、当時は未開だった地を選んだ。東北の震災がそのきっかけだと言う。被災地には雑誌が届かない。しかしWEBは生きている。キン肉マン世代のお父さんたちに元気を届けたい、だからやるのだ、と。

ここにきて、またしても読者のための新しい「方法」が切り開かれた。
キン肉マンは、やはり先駆者なのである。

image
変わらぬ味わいのジャンプコミックス「キン肉マン」

1件のコメント

コメントは受け付けていません。