マネジャーの仕事は、メンバーが最高に貢献できる「環境の創造」である

HRMの主体者は誰か?

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HRMの分権化により、主体者は人事部門からマネジャーへ

前回は効果的な人材マネジメント・HRMについて見てきたが、その実行者、主体者は誰だろうか?須田敏子『HRMマスターコース―人事スペシャリスト養成講座』に教えてもらおう。

ウォーリックモデル(ウォーリック大学1992年)では11社のイギリス企業を対象に実態調査を行い、企業がどのように経営戦略とHRMを変化させてきたかを調べた。

その結果、チャンスではなく困難な状況の中で経営戦略・HRMは明確化し進展していくことがわかった。企業が困難な状況から立ち直り、再生していく多くの場合、組織構造・意思決定の分権化が促進されている。具体的には組織構造は機能別組織から事業部別組織に移行し、 各事業部に権限・責任が委譲されていく。同時にHRM機能も分散化・分権化していた。

1993年Storeyは15社のイギリスの大企業を対象にラインマネジャーのインタビューとケーススタディを行い、これまでの Personal Management(労務管理)から、あるべきHRM(人材マネジメント)へシフトするモデルを提示した。

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Storey HRMへのシフトモデル

そこではラインマネジャーがHRMの主たる実行者となることが強調されている。これまで人事労務管理の主体者であった人事部門は、最終業績を含む組織パフォーマンス向上のため、ビジネスパートナーとしてライン部門と協働する役割となっている。

 

マネジャーの仕事

マネジメントの論理(レイモンド・E・マイルズ1975年)では、3つのモデルを主張している。

人的資源モデルによれば、マネジャーの仕事は「未開発の人的資源を活用すること」「全ての部下がその能力を限界まで貢献できるような環境を創造する」ことである。

(以下3モデルの解説は、伊藤健市「資源ベースのヒューマン・リソース・マネジメント」を元に、加茂俊究が要約編集したもの。)

伝統モデル

仕事は、たいていの人にとって生まれつき嫌なもの。仕事で得られるものの中で、収入が一番重要。創造性・自己統制・自己管理を要する仕事を望まない。

部下を厳しく監督し、統制する。仕事を単純で反復的で容易に習得できる作業に分割する。仕事の詳細手順・手続きを確立し、それらを厳格に実施。

給与が相当で上役が公平であれば、仕事に耐えることができる。仕事が単純で厳しく統制されるなら、標準まで生産性を上げる。

 

人間関係モデル

人は有用で重要であると感じたがっている。人は帰属すること個人として認められることを望んでいる。これらの欲求は、動機付ける際に、金銭よりも重要。

部下一人ひとりに、”自分たちは有用であり重要である”と感じさせること。計画を示し、部下の反対意見を聞く。部下の日常的な物事に対して、自己管理と自己統制を許すべき。

部下と情報を共有し、日常的な決定に参画させることは、帰属・自分が重要だと感じたがっている基本的な欲求を満足させる。これらの欲求を満足させることは、モラルを向上させ、公的な権威に対する抵抗を弱める。つまり、部下が喜んで協力するようになる。

 

人的資源モデル

仕事は嫌なものではない。人は、設定の際に一役かった意味ある目標に対しては、 貢献したいと思っている。人は、創造的で責任ある自己管理と自己統制ができる

未開発の人的資源を活用すること。全ての部下がその能力を限界まで貢献できるような環境を創造する。部下が重要な問題に十分に参加できるよう奨励し、絶えず彼らの自己管理と自己統制を広げさせる。

部下の影響力、自己管理ならびに自己統制を拡大することは、作業能率を直接改善する。部下がその人的資源(知識・経験・スキル等)を十分に活用することの副産物として、仕事で得られる満足が改善するかもしれない。

次回は、人材マネジメントの目的について。

 

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テーマ1.HRM