「人材は代替可能なモノではない」労務管理から人材マネジメント(HRM)へ

Human Resource Managementとは何か

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HRMのはじまり

須田敏子『HRMマスターコース―人事スペシャリスト養成講座』によれば、 Human Resource Management(以下HRM)の発端は、日米貿易摩擦などで経済力を失いつつあった1950年代後半から1960年代のアメリカである。

「人に対するマネジメントを変えなければならない」という危機感からHRMは生まれた。それまでのアメリカの労務管理(Personal Management)とHRMの比較は下表のとおり。

人材を「代替可能で、投資は行わない対象」から「投資する対象(リソース)」へと転換したのである。

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労務管理とHRMの比較(須田敏子『HRMマスターコース 人事スペシャリスト養成講座』を元に作成)

日本では、近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」や、松下幸之助の「企業は社会の公器」など、世のため人のために頑張る企業が持続的に成長することは当たり前だと考えられてきたので、不思議な感じがするかも知れない。

HRMの根幹には、ウエスタン・エレクトリック社「ホーソン工場の実験(1924-1932)」がある。「労働者の作業能率は、客観的な職場環境よりも職場における個人の人間関係や目標意識に左右されるのではないか」という仮説が導き出され、ここからHRMの様々な論が展開されていくことになる。

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ホーソン工場

HRMの日本語訳は『人材マネジメント』

さて、HRMという英語の日本語訳を考えてみよう。『人事管理』『人事労務管理』と訳すのが一般的なようだが、『管理』という言葉には人を代替可能な労働力として扱う(PM的な)響きがあって、HRMの訳語としては適さないのではないか。

HRMを直訳すると「人的資源管理(Human Resource Management)」であり、これなら人に投資するという意味が伝わる。また「人的資本管理(Human Capital Management)」という表現もある。しかし、どちらも硬く難解な上に、結局、投資対象の「物」として人を扱っているイメージが拭えない。

この壺中天では、人を重んじるというニュアンスを強調した『人材マネジメント』という表現を、HRMの日本語訳として使っていくこととする(守島基博『人材マネジメント入門 日経文庫B76』の考え方を参考にした)。

 

次回は、「人」のモチベーションに着目したソフトバージョンと、「事」を戦略的に進めるためのハードバージョン、HRMの2つの側面について見ていこう。

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テーマ1.HRM

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