松岡正剛「ちょっと本気な千夜千冊虎の巻」を読む

出版界の事件と言われた書評「松岡正剛千夜千冊」。7巻セットで10万円、1冊が広辞苑より分厚い、まあ凄まじい本だ。書く方も書く方だが、買う方も買う方だ(買いました)。

ここで紹介する「ちょっと本気な千夜千冊虎の巻―読書術免許皆伝」は、その副読本である。これだけでも読み応えあり。
扱っている領域が広くペラペラめくると興味をひく魅力的なフレーズがいくつも転がっている。こんな感じだ。

p79 「語りうることは明瞭に語られうるが、言えないことについては沈黙せねばならない」ウィトゲンシュタイン

p263 「書くということは、そもそも説明できないことを発見することなんだ」アニー・ディラード

中でも「無意識」の捉え難さについての記述は面白かった。少し長いが引用してみよう。

p148 人間を「正常と異常」に分けたことが、そもそもの大きな原因ではないか

p149 「無意識は他者の語らい」ジャック・ラカン

p150 それはきっと「自分」に心とか意識とか無意識のモデルがあると感じすぎるからなんです。(中略)そんなこと、しないほうがいい。だいたい何が正常で何が異常も、わからないものなんです。自己と他者の関係もたいそう微妙ですよ。他者がいなければ自己はなく、その自己が自分の中に他者をつくっているのですからね。ともかくこういうときは二分思考をしないことです。判断を善と悪に分けないこと。

二分思考(ダイコトミー)の扱いは松岡正剛がいつも言っていること。科学の知、西洋の知(のみ)で世の中を見るな。
私の大好きな「心理学的経営(大沢武志)」のベースにおかれている「人間の真実」、人なんて測りようがない、その上で何を語りうるのか、というスタンスに通じる。

最後にもうひとつだけ。我々は何を語りうるのか、何を語るべきなのか。

p264 「離れてはいけない、飛び越えてもいけない、わかったふりをしてはいけない」アニー・ディラード